
文久3年(1863年)創業の石川酒造は、伝統を守りながら、革新を続けている酒蔵です。
敷地内には、国の有形文化財に指定されている建物が立ち並び、直売店、史料館、レストラン、ゲストハウスが併設されています。
長屋門を入ってすぐ左手にある一対の大欅は、夫婦欅(めおとけやき)と呼ばれ、街のシンボルになっています。
明治期にビール製造をしていた歴史があり、111年後の1998年にビール造りを再開しました。
新進気鋭の高迫杜氏

銘酒「多満自慢」は、「多摩の心をうたいつつ、多摩の自慢となるよう、多くの人たちの心を満たすことができたら」という願いが込められています。
日本酒の製造だけでなく、1998年には明治期に行っていたビール醸造を111年ぶりに再開しました。
石川酒造の前迫晃一杜氏は、酒米だけでなく食米での酒造りにも取り組んでいる新進気鋭の杜氏です。
慶応大学と共同で様々な種類の米を使ってMRIで麹の働きを計測しています。
2025年3月には、東京の米と水に加えて、東京都立産業技術研究センターと共同開発したオリジナル酵母を使用した東京のテロワールともいえる日本酒を発売しました。
環境に対する取り組み

石川酒造では、東京の森を豊かにするために、東京の木を酒造りに活用しています。
「東京の森」は、杉の間伐材でチップを作り、熟成酒に漬け込んだお酒です。
また、石川家が所有する東京檜原の山には、貴重な香木として知られるクロモジが自生しています。クロモジは日本固有種で生薬として利用され、クロモジから抽出される精油は、かつては日本特産の香料として欧州に輸出されていました。
石川酒造では、クロモジを副原料としたビールを期間限定商品として製造しています。

日本酒の製造過程では酒粕が、ビールではビール粕が出来ます。これらの粕には栄養素が豊富に含まれていることはよく知られています。
石川酒造では、酒粕、ビール粕を豚の飼料として都立高校に提供しています。
粕を飼料として生徒たちが育てた豚は、敷地内のレストランの食材や経営するハム工場でハムやベーコンに加工されるという循環が生まれています。
伝統を守りつつも新しい挑戦を続ける石川酒造は、訪れることで日本酒の多様な魅力を深く知ることができる酒蔵です。